第5章 Rule
夕食が終わると、受刑者達が続々と談話室へと集まり出す。
俺もマサキに引き摺られるように、グレイ一色に彩られた談話室へと入った。
「一体これから何が始まるの?」
「テレビだよ。一時間だけだけど、テレビが見られるんだ」
マサキが嬉しそうに答える。
「見れる番組も限られてるんだけどね?」
たった一時間…
それだけのために集まってくる受刑者たち。
その中に当然だが、松本と二宮の姿もあった。
二人でチラチラと目配せをすると、二宮が刑務官の元へと歩み寄った。
二宮が刑務官に耳打ちをすると、刑務官の視線が一瞬俺に向けられる。
「サトシ、何があってもあの二人には逆らっちゃだめだからね」
二人の様子に、何かを感づいたマサキが、真剣な眼差しで俺を見下ろす。
「絶対だからね? 逆らったら懲罰になっちゃうんだからね?」
何度も繰り返されるその言葉の真意も分からないまま、俺は無言で頷いて応える。
懲罰なんか食らったら、刑期が短くなるどころか、伸びる可能性だってない訳じゃない。
翔がまた遠ざかる…
それだけは何としても避けなければならない。
俺は握った拳にグッと力を込めた。
何があっても耐えて見せる…
何が起きても…
全ての感情に蓋をしてしまえば…
でもそんな俺の覚悟は、一瞬粉々に砕け散った。