第34章 Reason
「俺は…俺はあなたのような弁護士にはならない!」
一瞬でも父さんのような弁護士になりたい、と憧れを抱いた自分が情けなくなる。
俺は握った拳をわなわなと震わせた。
「それならそれでも構わんさ。好きにすればいい。話はそれだけか? 用が済んだら…」
「まだだ…。まだあなたに聞きたいことがある」
俺はまだ肝心なことを、この人の口から聞き出せてはいない。
「やれやれ…、私もそう暇ではないんだがな…」
さも面倒臭げにソファーに深く腰を沈め、煙草の煙を燻らせた。
「森田と言う男を使って、智君に無実の罪を着せたのは…父さんなんですか?」
事件の揉み消しを条件に、喜多川建設を脅し、何らかの理由で喜多川建設の内情を知ってしまった結を森田を使って殺した上、智君に疑いがかかるよう罠を仕掛けたのは、父さん…あなたなんですか…?
違う…、と…
どうか違うと言ってくれ!
俺は祈るような思いで父さんの背中を見詰めていた。
でも、
「それがどうした…。お前にとって何の利益も齎さないような男は、排除するのが親の務めだからな」
俺の囁やかな願いは、ガラガラと音を立てて崩れ去った。
俺にとって何がプラスで、何がマイナスなのか…それを決めるのは、父さんではなく、この俺自身だ。
なのに父さんは…
目の前が絶望で暗く歪んで行く中、俺は背中に隠したタオルの包を解いた。