第5章 Rule
二人掛かりでテーブルを並べ終えると、鉄の扉の前に部屋長を先頭に正座の状態で並ぶ。
点呼をとる刑務官の声と足音が徐々に近づいてくる。
「105号…」
番号が読み上げられ、それぞれが返事をする。
「105号、4名異常ありません」
部屋長の松本が代表して答える。
「105号、異常なし!」
一際大きな刑務官の声が響く。
房に異常がないのを確認し終えると、配食係が食事を乗せたトレーを配り始めた。
それを持って決められた席に着くと、全員で手を合わせた。
「いただきます!」
松本の号令と共に、皆一斉に箸を手に取る。
誰一人声を発することもなく、黙々と箸を口に運ぶ。
そりゃそうだ、誰か一人でも声を上げれば、それはすぐに懲罰へと直結することになる。
楽しいはずの食事も、ここでは自由に会話を楽しむことすら、許されないのだ。
「ごちそうさまでした!」
全員が箸を置いたのを確認して松本が声を上げる。
そして配食係がトレーの回収を終えると、漸く自由な時間が与えられる。
松本は相変わらず小説を読みふけり、その横では二宮がトランプのようなカードを器用に操る。
娯楽の少ない環境に、
ただ虚しく時間だけが流れて行く。