第33章 Scheme
そうだ…
あれば確か、逮捕されてから三日が過ぎた頃だった。
俺の取り調べを担当していた刑事が言ったんだ。
『お前の弁護してやってもいいって物好きの先生がいらしてるぞ』って…
俺はその時、てっきり翔が来たんだと思っていた。
でも実際はそうじゃなかった。
接見室でアクリル板の向こう側に座っていたのは、顔も知らないひ弱そうな男と、そしてもう一人…。
「それが“あの人“…だったの?」
「…ああ」
二人は俺が椅子に座るなり、『正直に罪を認めれば、弁護を担当してやってもいい』と言ってきた。
当然俺は断った。
俺は何も罪なんて犯しちゃいないんだから…
でもそいつらは言ったんだ…
『お母さん、薬中で捕まったんだって?』ってな…
そのことは刑事からも聞かされていたし、驚くようなことでもなかったし、今更あの人が…俺を捨てたあの人がどうなろうと、俺には関係のないこと…そう思っていた。
なのに…
『お母さんな、ずっと君の写真を持っていたそうだよ? それから、君に謝りたいとも…』
そりゃ揺れたさ…
いくら未練がなくたって、親は親だ…
俺のことを少しでも思っていてくれたことに、感謝こそないけど、悪い気はしなかった。
そこにアイツらは付け込んだんだ。
俺が最も弱い場所にな…
『君が罪を認めれば、お母さんの弁護も我々が引き受けよう。勿論、君の事だって悪いようにはしないが…どうだ?』
ってな…