第33章 Scheme
背中を向けた俺の背後で、翔が深い溜息を零す。
「なんだ…、俺ってそんな弱い奴に思われてたんだ…。すげぇショック…」
自嘲気味に言い捨て、乾いた笑いを漏らした。
「違う…そうじゃなくて…そうじゃない…んだ…」
「何が違うの? だってそうでしょ? 智君は俺のこと、何も分かってない。俺は智君が思う程弱くなんかないっ…」
翔の手が俺の肩を掴み、驚いて振り返った俺の視界が反転する。
「翔…?」
見上げた俺の頬を、ポタポタと落ちる熱い雫が濡らした。
「…ごめんね、智君? 智君を苦しめたのは俺のせい…なんだよね? 俺が智君を愛したから…だから智君は…」
知ってる…?
翔は全部知ってる…?
だからこんなことを…?
「お前のせいじゃない…。お前は何も悪くなんかない…。俺が…」
ごめんな…、翔…
俺は両手で翔の濡れた頬を包み込むと、止めどなく流れる涙を指の腹で拭った。
「話して…くれる…?」
そう言った翔の唇が、微かに震えていて…
涙を拭った指をそのまま唇へと滑らせると、その輪郭をなぞるようにして撫でた。
そして、
「…ああ…」
とだけ返すと、俺はスっと両の瞼を閉じてから、大きく息を吸い込んだ。
「お前の想像通り、嘘の供述を強要されたのは間違いない…」
俺は一つ一つ記憶を遡るように、言葉を紡ぎ始めた。