第33章 Scheme
「少しだけ…事件の事について聞いてもいい?」
「今…?」
俺の問いかけに、翔が俺の頭を撫で、コクリと頷く。
出来ることなら、ここにいる間は、事件のことを思い出したくはないけど…
「今じゃないと駄目なこと…なのか?」
「出来れば二人だけの時に、と思って…」
翔のことだ、きっと何か考えがあってのことだろう。
「分かった。で? 俺に聞きたいことって?」
俺は翔の胸に預けた身体を起こし、翔と同じようにベッドヘッドに背中を凭せ掛けた。
翔の手が自然と俺の手に重なった。
「智君は何を知ってるの?」
「何を、って…?」
ふざけるわけでもなく聞き返した俺に、翔が困ったように眉を下げる。
「そうだな…、例えばだけど、喜多川が裏で何をやっていたのか、とか…かな…」
「そのことなら、侑李の件で…」
喜多川が、侑李達児童養護施設の子供達に売春をさせていたのは、翔だってもう知っている筈だ。
なのに何故今更…
「そうだったね。じゃあ、それ以外には? 侑李君の事件は、簡単に揉み消しが出来るような、簡単な事件じゃなかった筈だ。恐らく、誰かが裏で糸を引いていたとも考えられるんだけど、智君に心当たりは?」
俺の手に重なった翔の指先が、心做しか震えているように感じるのは、俺の気のせいだろうか…