第33章 Scheme
東山の立てた鬼のようなメニューで汗を流し、部屋に戻った俺は披露に満ちた身体をベッドに投げ出した。
最近では簡単な作業も任されるようにはなったけど、流石にキツい…
「大丈夫…じゃ無さそうだね? マッサージしてあげよっか?」
片時も離れることのない翔が白衣を脱ぎ、俺の脹脛に手を添えた。
「ん…、頼む…」
「あんま上手じゃないけど…」
自嘲気味に笑いながら、翔の手が俺の脹脛を揉み始める。
「どう? 力、強くない?」
「丁度…いいかな…」
正直、マッサージなんてそれまでだってまともに受けたことないから、それが気持ちいいことなのかどうかも、俺には分からない。
ただ…
翔が俺に触れている…
それだけで、俺は…
「悪ぃ…、せっかくだけどやっぱいい」
俺はうつ伏せた顔を枕に埋めた。
「ごめん、やっぱり俺下手だよね…。あ、井ノ原先生呼んで来ようか?」
脹脛から離れた手が俺の頭を一撫でして、また離れて行く。
「違う…、そうじゃなくて…」
咄嗟に翔の手首を掴んだ。
「行くな…。俺を一人にするな…」
ここを出たら、また離れ離れになるんだ。
だったらせめてこの時間だけでも…
「ここにいてくれ…。俺の傍に…」
「分かった。傍にいるよ、智君の傍に…」
翔がベッドの上に上がり、おいでとばかりに両手を広げた。
「馬鹿…狭ぇよ…」
照れ臭さを隠すように毒づきながら、俺は翔の胸に頬を埋めた。