第33章 Scheme
翔が傍にいてくれる…
だから大丈夫。
何度も自分に言い聞かせる。
それでも足取りは重くなる一方で…
「どうした?」
とうとう足を止めた俺を、前を歩く東山が振り返り、井ノ原ご俺の元に歩み寄った。
「…分かんねぇ…。俺にも…」
なんでこんなにも指が震えるのか…
なんでこんなにも嫌な汗が次から次へと湧いてくるのか…
ただ俺を見る視線が怖いだけじゃない。
それなだけなら、翔が傍にいてくれれば耐えられる。
なのになんで…
「今日は止めとくか?」
井ノ原の困り顔が俺を覗き込む。
俺はそれに首を横に振って返すと、ガタガタと震える手で井ノ原の腕を掴んだ。
「済まないが、少し離れて貰えないか?」
東山が二人の警官に言う。
「いや、でも…」
「コイツのことは俺が責任を持つと言ったろ? それに俺の治療の妨げになるようなことは遠慮願いたい」
強い口調と、元々の鋭い眼光に、二人の警官が顔を見合わせると、静かに俺の傍から離れて行った。
そして、
「行くぞ。時間が勿体ない」
東山が踵を返し、再び前を歩き始めた。
「大丈夫?」
風通しの良くなった俺の隣に翔が立ち、腰にそっと腕が回された。
そうか…
思い出してんだ…あの時のことを…
翔の目の前で手錠をかけられ、パトカーに乗せられた、あの瞬間を…
だから俺は…
「ああ…、大丈夫だ…」
翔、お前がいてくれるから…