第33章 Scheme
さて…、と東山が眼鏡の端を上げ、
「朝食が済み次第これに着替えて移動して貰おうか」
感情の読み取れない口調で言うと、ベッドの上に置かれたジャージを指で指した。
「なんだよ、もう少しマシなのないのかよ…」
これじゃムショとそう大して変わらない。
「ない」
何の飾り気もない、グレーのジャージに苦情を言う俺を、東山が一喝する。
「決まりだから、ね? ほら、手伝うから着替えよ?」
翔がジャージを手に、俺の病衣を脱がしにかかる。
「自分で出来るから…」
翔の相変わらずの過保護っぷりにも正直参るが、東山の冷酷さに比べれば幾分かはマシか…
翔と一緒に朝食を済ませ、待ち構えていた警官二人に両脇を挟まれ、鉄格子を抜けると、そこはもう一般病棟になっていて、それまでと何ら変わりない景色なのに、何故か空気が違うような気がした。
これがシャバってやつか…
そう思っただけで、不思議なことに自然と緊張感が走る。
理由は分かってる。
視線だ。
警官と並んで歩く俺は、傍から見れば一種異様に映っている筈だ。
向けられる視線が…痛ぇよ…
俺は自然と暗くなって行く視界の中で、翔の姿を探し、後ろを振り返った。
翔…しょお…っ…!
心の中で何度も名前を呼んだ。
すると俺の動揺に気付いたのか、翔が俺をしっかりと見つめて、小さく頷いた。
大丈夫だ、って…
俺が着いてる、って…