第33章 Scheme
翌朝、約束通り朝一でやって来ると、まだ微睡みの中にいる俺の頬に手を滑らせた。
…時間に正確なとこは昔っから変わってねぇな…
「良く眠れた?」
「まあ…な…。お前は?」
「俺? 俺は…そうでもないかな…」
眉尻を下げて、困ったように笑う目の下には、昨日は気付かなかったけど、くっきりと隈が出来ている。
俺のせいだ…
翔はハッキリとは言わないけど、翔が俺のために疲弊しているのは、その様子を見ていれば分かる。
済まない…
心の中で呟く言葉は、決して声にすることはしない。
翔が嫌がるのを知ってるから…
「あ、もうそろそろ東山先生と井ノ原先生が回診に来る時間だよ? 起きて?」
「別に回診なんて必要ねぇよ…」
重病人ならともかく…
「駄目だよ。ここにいる間は、ちゃんと先生方の言うこと聞かないと…。ほら起きて?」
…ったく、お前は俺の母ちゃんかよ…
って言っても、俺に母ちゃんの記憶なんて、殆どないけど…
「分かったよ、起きるから…。但し、キスしてくれたらな?」
俺を見下ろす翔の首の後ろに手を回して、顔を引き寄せた。
翔の目が、一瞬驚いたように揺れた。
でも、
「そうだね、お姫様は王子様のキスで目を覚ますんだもんね?」
クスッと笑った翔の顔が降りてきて、俺の唇に翔のそれが重なった。
…つか、お姫様なんて柄じゃねぇし…