第33章 Scheme
東山と井ノ原が出て行った途端、二人きりになった狭い部屋の中は、何とも言えない緊張感が漂っていた。
話したいことは山ほどあるのに、上手く口に出来なくて、俺はベッドの上で仰向けになったまま、ただ窓の外を眺めていた。
それは多分翔も同じで、別に座るわけでもなくパイプ椅子を広げては、また畳んで…
ずっとそれを繰り返していた。
「…なあ、こっち…来いよ…」
そんな空気に、先に耐えられなくなったのは俺の方だった。
限られた時間を、一秒でも無駄にしたくなかった。
「…うん…」
翔がベッドの端に腰を下ろすと、安物のベッドはギシッと嫌な音を響かせて軋んだ。
「もっとだよ…」
手を伸ばせば触れられる距離なのに、身体が強ばって指一本さえ動かせない。
緊張…、してんのか…?
「…うん。でもこれ以上近付いたら、俺…自分止められる自信ないけど…」
翔が少しだけ距離を縮めて、俺の頬に指先を伸ばす。
馬鹿…震えてんじゃねぇよ…
「止めなんな…。だからもっと…」
近くに…
言い終える前に、俺の身体は翔の腕の中にすっぽり包まれていた。
「ずっとこうしたかった…。智君の顔を見る度、何度も何度も思ってた…」
俺もだよ…
ずっと翔にこうされたかった。
言葉で答える代わりに、俺は両腕を翔の背中に回した。