第33章 Scheme
取り敢えずその格好ではなんだから、と言って井ノ原が病衣一式を差し出した。
「やだよ、こんなの着たくねぇよ…」
水色のそれは、如何にも“病人”みたいで、目にしただけで気が滅入る。
「仕方ないよ、ここにいる間は我慢しなきゃ…」
井ノ原の手から病衣を受け取った翔が、それを広げて俺に押し付ける。
「その通りだ。それにその番号付きの服よりは、よっぽどマシだろうが」
そりゃもっともだ…。
俺は翔から病衣を引き取ると、刑務服のボタンに手をかけた。
でも…
「そんな目で見てんじゃねぇよ…」
ゴクリと息を飲んで、開いた両目に欲の色を宿し始めた翔を諌めた。
「そ、そんな俺はただ…」
咄嗟に翔が俺に背を向ける。
耳まで真っ赤にして…
俺は肩を揺らしながら刑務服を脱ぎ捨てると、病衣を素肌に纏った。
「よし、では今日はこのままゆっくりするといい。因みに、研修医は残しておくから、彼の言うことを聞くように」
「ああ…、分かったよ…」
「俺も向かいの部屋に詰めてるから、何かあれば呼んでくれ」
「ああ…」
多分井ノ原を呼ぶことはないけどな…
俺は心の中で呟きながら、医療刑務所よりは若干寝心地の良さそうなベッドに寝転んだ。
「ああ、後…。あまり大きな声は出さないように。生憎、防音設備までは整っていないからな」
東山が唇の端を持ち上げて、ニヤリと笑った。