第33章 Scheme
パン、と手を打ち鳴らす音が聞こえて、俺達は漸くお互いの身を引き剥がした。
それでも名残惜しくて、見つめ合う俺達を、大袈裟な咳払いをして、東山が制した。
「感動の再会の所済まんが、後にしてくれないか? たっぷりとは言わんが、時間はまだある」
両目を手で覆ってしまった井ノ原に比べ、東山は至って冷静だ。
「…すいま…せん…」
慣れない眼鏡を外し、胸のポケットに引っ掛けた翔が照れ臭そうに頭を下げた。
「まあいい。ところで大野…、ココに来た目的は分かっているな?」
「ああ、リハビリだろ?」
表向きの理由は、な…
でも実際はそうじゃないことくらい、井ノ原にこの計画を聞かされた時に、とっくに分かっていたことだ。
「ならいい。そちらの“研修医”の先生の言うことを良く聞くように。いいな?」
「“研修医”ねぇ…」
俺は翔を横目で見ると、見慣れない格好をした翔を、上から下まで舐めるように見つめた。
白衣を纏った翔も悪くないな…
「も、もう…、そんな見ないでよ、恥ずかしいんだから…」
翔は俺の視線から逃れるように背中を向けると、井ノ原の手からクリップボードを受け取った。
「一応、そこに記載されているリハビリテーションはこなして貰うから、そのつもりで」
僅かな笑いを含んだ口調に、俺の肩がピクリと上がった。
マジかよ…