• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第33章 Scheme


パン、と手を打ち鳴らす音が聞こえて、俺達は漸くお互いの身を引き剥がした。

それでも名残惜しくて、見つめ合う俺達を、大袈裟な咳払いをして、東山が制した。

「感動の再会の所済まんが、後にしてくれないか? たっぷりとは言わんが、時間はまだある」

両目を手で覆ってしまった井ノ原に比べ、東山は至って冷静だ。

「…すいま…せん…」

慣れない眼鏡を外し、胸のポケットに引っ掛けた翔が照れ臭そうに頭を下げた。

「まあいい。ところで大野…、ココに来た目的は分かっているな?」

「ああ、リハビリだろ?」

表向きの理由は、な…

でも実際はそうじゃないことくらい、井ノ原にこの計画を聞かされた時に、とっくに分かっていたことだ。

「ならいい。そちらの“研修医”の先生の言うことを良く聞くように。いいな?」

「“研修医”ねぇ…」

俺は翔を横目で見ると、見慣れない格好をした翔を、上から下まで舐めるように見つめた。

白衣を纏った翔も悪くないな…

「も、もう…、そんな見ないでよ、恥ずかしいんだから…」

翔は俺の視線から逃れるように背中を向けると、井ノ原の手からクリップボードを受け取った。

「一応、そこに記載されているリハビリテーションはこなして貰うから、そのつもりで」

僅かな笑いを含んだ口調に、俺の肩がピクリと上がった。

マジかよ…
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp