第33章 Scheme
鉄格子を抜けると、すぐそこに東山が俺を待ち受けていた。
「久し振りだな? 調子は?」
警察官だか警備員だかが掴んだ俺の手を引くと、ここに来て初めて、鍵のない部屋のドアが開かれた。
「入りなさい」
東山が俺の背中を押す。
そして俺と一緒に部屋に入ろうとした警備の人間を一瞥すると、
「ここからはご遠慮願います」
東山独特の感情の見えない口調で言い放った。
「では我々は外で待機してるので、何かあれば声をかけるように」
渋々二人が顔を見合わせて部屋を出て行く。
すると待ってましたとばかりに井ノ原が部屋のドアをバタンと閉めた。
「智…くん…」
それまでよっぽど堪えていたのか、俺の名前を呼んだ翔の目には、大粒の涙が溜まっていた。
「もっと顔を…」
見飽きてる筈なのに…
なのに俺の顔を見たいと言う翔に、胸が痛む。
「翔…会いたかった…」
俺は翔の首に腕を回すと、薄く開いた唇に自分のそれを押し当てた。
翔もまた、躊躇いながらも、俺のキスに応えるように俺の背中に腕を回した。
井ノ原と東山が見てるのに、本当は恥ずかしくてたまらないのに…
息も出来ないくらい強く抱きしめられて、嬉しくてたまらなかった。