第33章 Scheme
横目でチラッと覗き見た翔は、白衣姿に眼鏡をかけていて、下ろした前髪のせいか、幾分幼く見える。
おまけに胸に着けたネームプレートには、ご丁寧に“櫻木”とまで書いてあるから笑ってしまう。
おそらく翔の立場に配慮した、井ノ原と東山の采配だろうが、どんなに身形を変えても、名前を変えても、俺にはそれが翔だとすぐに分かる。
手を伸ばせば触れられる距離にいながら、触れられなかった翔が、今俺の隣にいる…それだけで胸が苦しくなる。
人知れず胸に手を当てた俺の目の前で、一般病棟と警察が管轄の病棟を隔てる鉄格子の鍵が開けられた。
「では我々はここで…」
強面二人が警察関係者に向かって敬礼をして見せる。
どうやら二人の任務は、俺を何事も無くここまで送り届けることで完了らしい。
「じゃあな、くれぐれも問題は…」
「起こさねぇよ…」
いい加減しつこい…
俺は強面刑務官二人に頭を下げると、鉄格子を潜った。
それを見計らったように、背後で鉄格子が閉じられ、再び鍵がかれられた。
何度味わっても、この瞬間だけは、嫌でも自分が囚人なんだと思い知らされる。
でも今は違う…
俺の隣には翔がいるから…
翔と一緒なら…
怖くない…