第33章 Scheme
久し振りに見た外の景色は、少しも変わることなく、その季節だけを冬へと変えていた。
「どうだ、久し振りのシャバは」
助手席に乗り込んだ井ノ原が振り向く。
「ああ、悪くない…」
もっとも、脇を固める強面がいなけりゃ、の話だが…
「井ノ原刑務官、私語は慎むように。お前もだ」
ちょっと口を開きゃ、この調子だからな…
息苦しさを感じながら、それでも俺の気持ちは、少しばかり晴れやかだった。
翔に会える…
そう思うだけで、自然と胸が弾み、顔が綻ぶのを感じた。
車が病院の裏口に停められ、先に降りた強面の刑務官がドアを開いた。
「降りろ」
命じられるまま車を降りると、冬の冷たい空気が、薄着の俺の横を掠めて行った。
でもその寒ささえ、今の俺には気にならないほど、俺の胸は熱くなっていた。
強面の一人が裏口のドアを開ける。
背中を押され、俺は開かれたドアの向こう側に足を踏み入れた。
すると、俺のすぐ背後で鉄のドアが、重厚な音を響かせて閉じられた。
そこに来て漸く、俺の両手から手錠が外された。
「馬鹿なこと考えるなよ?」
強面の一人が睨みをきかせる。
「しねぇよ…」
馬鹿なこと考えてる暇があったら、少しでも…例え一秒でも長く翔と一緒にいたいから…