第5章 Rule
圧倒的な強を秘めた視線が俺を見下ろす。
「大野、とか言ったな? ここで上手くやって行きたかったら、少なくとも上のモンには逆らわないことだ。…なぁ、マサキよ」
ドスの効いた声に、マサキが怯えた様子で頭を下げる。
「す、スンマセンでした…!」
両手をピタリと畳に付け、額も同じように畳に擦り付ける。
コイツには誰も逆らえない、ってことか…
「おい、和」
「はい…」
和と呼ばれた男に、さっきまでの気迫はスッカリ消え去っている。
「新入りの歓迎会には、まだちょっとばかし気が早過ぎだ。 せめてお天道様がお隠れになってからにしようじゃねぇか」
言葉の意を察したのか、和がククッと鼻を鳴らした。
後頭部の抑えが、フッと軽くなり、俺はノロノロと身体を起こした。
膝を折り、マサキがしたように両手を畳に付けると、深々と頭を下げた。
「今日からここでお世話になります、大野智です。どうぞ宜しくお願いします…」
「ちゃんと出来んじゃねぇか、なあ大野よ? 俺は部屋長の松本だ。ここでは俺が絶対的ルールだってこと、しっかり覚えとけよ?」
松本が俺の肩をポンとで叩く。
「顔上げろや?」
俺は畳に擦り付けた顔を、ゆっくりと上げた。