第5章 Rule
「へぇ~、強姦致死ですか? 大人しそうな顔して、案外ヤルことやってるんですね?」
部屋長の隣に座っていた男が下碑た笑みを浮かべて俺を見た。
「ってかさぁ、アンタここのルール、何にも分かってないんですね?」
呆れたと言わんばかりに息を一つ吐くと、男が腰を上げ、俺の目の前に立ちはだかった。
身長は俺と差ほど変わらないが、色白で、どちらかと言えば女性的な顔をしている。
「新入りはまず部屋長に挨拶するのが”筋”ってもんじゃないですか? ねぇ、マサキ?」
冷ややかな目がマサキを見下ろす。
「す、すんません!」
マサキの顔から笑顔が消える。
蛇に睨まれた蛙、といったところだろうか?
「まぁさ、ここのルールは追々覚えて貰うとして…」
男の手が俺の服の襟を掴んだ。
そのまま強い力で捩じり上げられ、俺は息が詰まるのを感じた。
「おら、とっとと挨拶しろや!」
瞬間、俺の身体は畳の上に転がされ、驚いて顔を上げようとした俺の後頭部を押さえつけられた。
ささくれた畳で擦れたのか、頬に仄かな熱を感じる。
「和、いい加減にしねぇか…」
頭の上で感情の籠らない声が響いた。
「…たく、こう煩くちゃ読書も出来やしねぇ…」
なぁ、と言って声の主が俺の前にしゃがみ込んだ。