第33章 Scheme
最近になって自営作業と、簡単な製造作業を任されるようになった俺は、それまでもの鬱屈とした生活を振り払うように、作業に没頭した。
俺に任されたのは、刑務所内で出される衣類の洗濯係と、手先の器用さを買われての紙袋製造の仕事だった。
どちらも楽な仕事ではなかったが、それでも以前いた所よりは、随分と身体の負担は少なかった。
それに何より、監視の目も薄く、他の受刑者との会話を楽しむことも出来た。
尤も、ここに収監されてる奴等は、足に障害を抱えただけの俺は別として、殆どが重病人か、若しくは精神を病んでいる奴等ばかりだから、そこまで厳重な監視は不要なのかもしれないが…
そんな中、庭で大量の洗濯物を干す俺の肩が叩かれた。
井ノ原だった。
「調子良さそうだな?」
井ノ原は人の良さそうな顔を綻ばせた。
「まあな…」
愛想なく答えた俺に、井ノ原はポケットの中から取り出した飴玉を握らせた。
「いいのかよ、こんなことして…」
バレたら、俺が懲罰受けるんだけど…
「さっさと食っちまえ」
俺は洗濯物の影に隠れて包みを開けると、飴玉を口の中に放り込んだ。
久し振りに口にした、薄荷味の飴玉は、まるで澄み渡った青空のように、俺の心まで澄んだ色へと変えて行った。