第32章 Result
俺達はその足で智君の元を尋ねることにした。
遺伝子検査の結果が俺達の望んだ結果だったこと、そしてその結果報告書を、裁判所に新たな証拠として提出申請したことを報告するためだ。
勿論、今後のことについての、簡単な打ち合わせも兼ねて、のことだ。
「そう言えば、長野刑務官から連絡は?」
「いや、まだ何も…」
「迷ってんだろうな…」
「かもな…」
迷うのも当然のことだ。
いくら自分のことではないにしても、身内の膿を自らの手で出すことは、屈強な精神力を誇る彼らにとっても、相当なストレスに違いない。
「ああ、それと…。大野に使用されたと思われる薬物の入手ルートだが…」
「それなら深山さんが…」
「ああ、どうも坂本が通っていた病院のカルテから、睡眠導入剤の服用を認める記述が見つかったそうだ」
やっぱりか…
坂本は智君に睡眠導入剤を服用させて、それで…
なんて卑劣な…
俺は知らず知らず奥歯をギリッと噛み、込み上げる怒りを顕にした。
「それともう一つ…。性的興奮を促すような薬も、同時に処方されてるようだ」
「それって…」
所謂、性的不能者を対象とする薬、ってことか…?
「ああ、お前の想像通りで間違いないだろうな…」
「まさか、それも智君に…?」
「可能性は…あるだろうな?」
俺はとうとう抑えることの出来なくなった怒りを、握った拳と共に壁に叩き付けた。