第32章 Result
「お前、そんな顔で大野に会うつもりか? 気持ちは分からんでもないが、落ち着け」
岡田に言われて俺は、ガラス写った自分の顔に目を向けた。
「俺達の仕事は、依頼人に不安を与える事では無い筈だ。お前の今の顔は、大野を不安にさせるだけだ」
分かってる。
岡田の言わんとすることは、痛い程分かってる。
でも、この腹の底から湧き上がってくる怒りを抑える術を、俺は知らない。
「とにかく、その件は後回しだ。今は大野が少しでも再審に向けて前向きになれるよう、俺達が全力でサポートしてやらんとな?」
俺の荒んだ心を宥めすかのように、岡田が俺の肩を叩く。
でも俺はその手を振り払うと、岡田をその場に残し、足を先に進めた。
いけない…
こんな気持ちじゃいけない…
思えば思う程、苛立ちが募って行った。
あの人は…
もしあの人がこの事件に関わっているとしたら…
俺はあの人を許すことが出来るのだろうか…
卑劣な手を使って智君を貶め、穢したあの人を…
俺は許せるのだろうか…
もしかしたら俺は、怒りに任せてあの人を殺してしまうかもしれない。
それでも足りないかもしれない。
愛する人を傷付けられた怨みは、どんな闇よりも深く暗いんだと、俺はこの時初めて知った。
『Result』ー完ー