第32章 Result
電話は事務所からのものだった。
「何だって?」
ハンドルを握った岡田が俺を覗き込んだ。
「えっ、ああ…、例の結果が届いたって…」
「結果、って…、あのDNA鑑定の…?」
後ろのシートから深山さんが身を乗り出す。
その顔はどこか嬉々としているようにも見えて…
「おい、シートベルトしろって…」
岡田に言われるまで、俺と岡田の顔を交互に覗き込んだ。
「まあ、まだ“届いた”ってだけで、封を開けてみんことには分からんがな…」
岡田の言うことはもっともだ。
吉と出るか凶と出るか…
その答えは封を開けるまで、誰にも分からないのだから…
「よし、急いで事務所戻るぞ」
岡田がアクセルを踏み込むと、車は事務所に向かって走り出した。
その間も俺と深山さんはファイルを開き、長野刑務官との面談から得た情報を纏めつつ、それまでの資料に目を走らせた。
「うーん…、仮にその結果が俺達の望んだ通りの物だとして…」
ページを捲っていた深山さんがその手を止め、小さく唸るように呟いた。
深山さんの言わんとすることは俺にも分かる。
結果が例え俺達が有利に傾くものだったしても、それだけでは証拠としては、まだ弱く、冤罪に導くためには、それ以上の確固たる証拠が必要になる。
でも俺達はまだそれを手にはしていない。