第32章 Result
「そうですね、彼ならきっと…」
長野刑務官は納得したように何度か首を縦に振ると、凡そ刑務官には似つかわしくない色白の顔に笑みを浮かべた。
そして、
「お話は分かりました。俺に出来ることであれば協力はします。こう見えても俺も刑務官の端くれですから…。見過ごすことは出来ません」
そう言った長野刑務官の目には、何か覚悟めいた物が見えたような気がした。
詳細は日を追って連絡することを告げ、俺達は長野刑務官の家を後にした。
「一歩前進、ってとこだな」
ホッと息を吐いて、岡田が俺の肩を叩いた。
「ああ、そうだな…」
「どうした、浮かない顔をして…」
「いや、そんなことはないよ? ただ、俺達はまだ入り口にしか立っていないんだな、と思うと…」
この先、どれだけの時間がかかるのかと思うと、正直気が遠くなりそうで…
一歩前進出来たことすら素直に喜べずにいた。
「そうだな…。俺達はまだまだ事件の核心にすら触れてはいないからな…」
「核心か…」
その核心に近付くことを、もしかしたら俺は一番恐れているのかもしれない。
核心に触れた時、俺はどうなってしまうのか…
その時俺はどうすべきなのか…
不安と、ほんの僅かな喜びを抱きながら助手席に乗り込んだ、丁度その時、俺の胸ポケットでスマホが震えた。