第5章 Rule
手にした鍵の束で鉄の扉を解錠する。
ギッと音を立てて扉が開かれると、房にいた全員の視線が一気に俺に集中する。
「入りなさい」
促され、スリッパを揃えて8畳程の房に入った。
「部屋長、後は頼んだぞ」
刑務官が声をかけると、房の壁に凭れて小説を読み耽る男が顔を上げた。
「へい、了解…」
気だるそうに敬礼を一つして、視線をまた小説へと落とした。
一瞬だけだったが、長い睫毛が印象的な東洋的な美形だ。
立ち竦む俺の背後で、再び鉄の扉が閉められ、鍵がかけられた。
「ンなとこ突っ立ってないでさ、コッチ来いよ」
爽やかな笑顔で俺に向かって手招きをする。
「オレ、相葉ってんだ。皆からはマサキって呼ばれてる。宜しくな?」
マサキが俺に向かって手を差し出して来る。
「あ、あの、大野…です。大野智…」
俺がその手を取ると、マサキがギュッと握り返してきた。
「ふ〜ん、サトシね? で、何やったの?」
「何、って…?」
笑顔で聞いてくるマサキに、俺は首を傾げて見せる。
「だからさぁ、何でこんなトコ来たのか、って聞いてんの」
なんだ、そういうことか…
「…強姦致死…」
俺は身に覚えのない“罪”を口にした。