第32章 Result
俺はテーブルの上に広げられたファイルを閉じた。
例えそれが証拠に値しそる資料だとしても、これ以上人の目に晒しておくことは、俺には出来なかった。
「それで…俺はどうすれば…?」
暫くの沈黙の後、長野刑務官が意を決したような口調で言って、ソファーの背に預けた背中を上げた。
岡田はそれを見て小さく頷くと、一つ咳払いをした。
「そうですね…。この件に関しては、彼の冤罪を晴らすことと、直接的には関係はありません。ただ、国家権力で守られた刑務所内の膿を出すため…と言えばご理解頂けますか?」
権力を笠に着て、こんな横暴とも言える行為が蔓延している…
勿論全ての更生施設でこんなことが行われているとは思わないし、思いたくはない。
ただ、ごく一部であったとしても、法の下にいる俺達は、それを見逃すわけにはいかないんだ。
「松本の目撃証言はあります。ですが当時彼は服役中で、その彼からの証言は…残念ながら信用性に欠けると判断される可能性が高い」
それが如何に信憑性の高い証言だったとしても、だ。
自分の犯した罪を悔い、与えられた刑期を全うしたとしても、所詮犯罪者は犯罪者としか見られないんだ。
人間なんてそんなもんだ。
悲しいことだけど…