第32章 Result
「お休みのところすいませんね、自宅にまで押し掛けてしまって…」
嫌な顔一つせず、リビングに通してくれた長野刑務官に向かって、岡田が頭を下げる。
すると長野刑務官は、首を横に振ってから、俺達と丁度向かい合わせに座った。
「俺としても、この方が気兼ねなく喋れるんで助かります。所内だと、どうしても監視の目がありますから…」
長野刑務官は俺達の前にお茶を配りながら、肩を竦めて見せた。
確かに、監視カメラだらけの空間では、出来る話も出来なくなってしまう。
それを考えたら、“自宅”という場所を選んだのは、最良の選択だったとも言えるだろう。
「それで、えっと…坂本刑務官のこと、でしたっけ?」
「ええ、言える範囲で構わないので、坂本刑務官について教えて頂けたら、と思いましてね?」
お茶を口に含み、岡田が言うと、長野刑務官は腕を胸の前で組み、小さく唸った。
「そうだなぁ…、悪い人ではないと思いますよ? 特警の割には、俺達にも気さくに話もしてくれるし、人付き合いは割といい方だったかな…。ただ、聞いた話なんですけどね…」
あくまで“噂話”だと前置きをしてから、長野刑務官はゆっくりと口を開いた。
「坂本刑務官て、元々警察署勤めだったせいか、マル暴には顔が利く、って言うか…」
「裏で繋がっている、と…?」
俺の問いかけに、長野刑務官は無言で小さく頷いた。