第32章 Result
結果が出るまでの間、俺と岡田、そして深山さんは長野刑務官の元を尋ねた。
坂本と言う男について話を聞きたかったからだ。
松本の話によれば、二人が独房に入れられた際、坂本は智君に対して性的暴行を働いている。
それも松本が見ている前で…
その時の智君の様子について、松本は違和感しか感じなかったと言った。
それは身体を重ねたからこそ感じ得た違和感だったのかもしれない。
そして坂本刑務官に対しても、同様に違和感を感じていた、と…
松本の知る限りの坂本刑務官は、規則に厳しい刑務官ではあるが、受刑者に対して暴力を振るうような人物ではなく、ましてや性的暴行を加えるなんて、とても考えられないとの事だった。
松本は、坂本が智君に対して、性的興奮を覚えるような薬物、或いは睡眠剤のような物を使用したのではないかと疑っていた。
ただ俺達にそれを調べる術はなく…
仮に松本の目撃証言があったとしても、所詮は受刑者の言うことだ。
簡単に信用などしてくれる筈がない。
だとしたらどうすればいい…
俺達の出した結論は、所謂“身内”からの確たる証言を得ることだった。
ただそれだって簡単なことではない。
身内の垢を身内が…なんてこと、普通では考えられない。
ましてや国家権力の下だから尚更だ。
それでも俺達は僅かな期待を胸に抱かずにはいられなかった。
坂本と顔を合わせることの多い長野刑務官なら、ひょっとしたら何か気付いているかもしれない。