第5章 Rule
「7005番、出なさい」
鉄の扉が開かれた。
軋む身体に鞭打ち、僅かな身の回りの物を手に独房を出る。
悪夢に魘された一週間…
それが漸く開放されると思うと、身体の痛みも虫に刺されたぐらいにしか感じなかった。
刑務官の後ろに着いて雑居房のある棟まで歩く。
途中擦れ違う数人の刑務官の視線が、俺に絡み付く。
コイツらもアイツと同じか…
まったく、思い出すだけで反吐が出そうになる…
それでも外界とは隔絶された独房の湿った空気とは違う、新鮮な空気を全身に取り込めば、少しは落ちた気持ちも晴れて行く。
一面に広がる青い空に、少しだけ翔が近くなったのを感じた。
翔…
今頃お前も同じ空を見上げてるの?
俺とお前は、この空の下でちゃんと繋がってる?
翔…
いつになったら俺はお前の元へ帰ることが出来るんだろう…
雑居房のある棟に着くと、やはりいくつもの鍵のかかった扉をくぐる。
独房だろうが雑居房だろうが、結局のところ閉鎖的なのには変わらない。
違うことと言ったら…少なくとも孤独を感じさせない人の気配だろうか…
ここには独房と違って、人の声が溢れている。
刑務官が“105”と、書かれたプレートの前で足を止めた。