第31章 Friction
「そうですか。俺は彼の担当ではないので、恐らく法廷でお目にかかることはないと思いますが…。これだけは言っておきます。彼の担当検事は、なかなかの強敵です。もし貴方が本気で証言台に立つつもりなら、それ相応の覚悟をしておいた方がいいですよ」
「勿論だ。俺だって生半可な気持ちで証言台に立とうなんて思ってないさ」
証言台に立つ…
そう心に決めた時から、それなりに覚悟はしてきたつもりだ。
例えそれが父さんを裏切ることになろうと、俺は…
「それを聞いて安心しました。俺は検察側の人間ですから、表立ってあなた方に協力は出来ませんが、どうぞ頑張って下さい」
小栗さんの右手が俺に向かって伸びる。
迷うことなく俺はその手を取ると、強く握った。
それが、決意の現れだと言わんばかりに…
「じゃあ、俺はこれで…。また何かあれば深山を通して連絡させて頂きます」
小栗さん軽く頭を下げると、俺の手から伝票を奪い、茂さんの店を出て行った。
「さあ、ここからが本番だぞ、櫻井」
岡田が俺の肩を叩く。
「ああ、分かってる」
俺達は揃って店を出ると、翌日の予定だけを確認さして家路に着くことにした。
別れ際、
「お前、一人で抱え込むなよ?」
岡田がポツリと言った一言に、苦笑いを浮かべて頷きながら…