第31章 Friction
自宅に戻った俺は、すぐ様PCを立ち上げ、血液鑑定は元より、遺伝子学的な検査にも長けた業者を手当たり次第に検索した。
とは言え、その方面に関しては素人同然だから、何が良くて何が悪いのかも分からず…
結局幾つかの業者をピックアップするに留まった。
俺はピックアップさた業者の連絡先をスマホに打ち込むと、それを岡田にメールで送った。
明日会ってからでも済むこと…
そうは思っていても、逸る気持ちは抑えきれない。
後は岡田の判断に委ねようと…
岡田なら、俺よりもきっと的確な判断を下す筈だから…
数日後…
俺の手元に検査キットを含む封書が届けられた。
中には、綿棒の様な物が二本と、それを保存するためのプラスチック容器が二つ入っていた。
説明書には、この二つのキットで採取した検体が、どちらの数値も合致することが、この検査の課題と言えるようで…
もしも合致しない場合は、再検査が必要になる。
それでも合致しなければ…
その時は、この検査をしたこと自体、何の意味も無くなってしまう。
それでも今は…
たった一つの可能性にだって賭けたい。
俺は届いたキットを手に、岡田と共に再び智君の元を尋ねた。
智君は一瞬戸惑った様子を見せたが、それでも俺達の要請に応じてくれた。
「後は結果を待つだけだな」
「一週間くらいで出るそうだから…」
俺達は祈るような気持ちで、検体を同封した封書をポストに投函した。
『Friction』〜完〜