• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第31章 Friction


「そろそろ店閉める時間なんやけど…」

顔を突き合わせて黙りこくったままの俺達の前に、申し訳なさそうに眉を下げた茂さんが立つ。

そうか…
もうそんな時間なのか…全然気にしていなかった。

「すまんなぁ…」

「いや、俺達の方こそ遅くまですまん」

テーブルの上の資料を掻き集め、岡田が茂さんを見上げる。

「あ、悪いけど今日のことはうちのボスには…」

岡田が人差し指を口に当てる。

今回の件は外部に漏らすわけにはいかないという、岡田なりの判断なのだろう。

それが例え所長であっても、だ。

尤も、俺達の仕事には守秘義務ってのがあるから、当然のことなんだけど…

それを茂さんも良く分かっているから、岡田が全てを言わなくても、仕草だけでその意味を理解してくれる。

「あの、一つ確認なんですけど…」

伝票を手に、席を立とうとした俺達を、小栗さんが引き留める。

「櫻井さんは本気で証言台に立つつもりで?」

「ああ、そのつもりだけど…。それが何か?」

「いえね、櫻井さんのお父様は、あの櫻井俊弁護士なんですよね?」

「そう…ですけど…」

出来ることならここで父さんの名を聞きたくはなかったけど…

それも仕方ないのか…

この業界では、俺があの人の息子だってことは有名な話だし…

それは検察側にとっても同じことなんだろうな…

尤も、俺としてはあの人の息子と呼ばれることに、いい加減辟易としているけど…
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp