第31章 Friction
俺は気持ちを落ち着かせようと、冷めて温くなったコーヒーを一気に喉に流し込んだ。
「まずは、信頼のおける民間の鑑定業者を探すことから始めないとな…。小栗さん、心当たりは?」
岡田に聞かれて、小栗さんがスマホを手にする。
「そうですね…、伝がないわけではないんですけど、どこも検察側の息のかかった業者ばかりで…」
俺達弁護士にも懇意にしている業者があるんだから、検察にだってそれはあって当然だろうな…
でもどうして?
以前指紋鑑定の依頼をした業者ではなく、何故新たに…?
首を傾げた俺の肩を、岡田が軽く叩いた。
「どうした、腑に落ちん顔をして…」
「あ、いや…。この間の業者じゃ駄目なのかと思って…」
「駄目ってことはないよ。ただ、偽装工作が行われている可能性がある以上、さっきも言った通り、慎重にならざるを得ないからな…。安全を期すためには、一度使った業者とは関わらない方が得策だとは思わんか?」
そうか…
実際、業者間の情報漏洩だってないわけじゃない。
それにあの人の魔の手がどこまで伸びているのか分からない以上、安心は出来ないってことか…
尤も、岡田にしても、深山さんにしても、そして小栗さんにしたって、あの人が今回の件に関わっている、なんてこと知る由もないけど…