第31章 Friction
二人が指を差したのは、紛れもなく裁判所に証拠として提出されたものだった。
「やっぱり国選弁護人にしておくのは勿体ない、って噂は伊達じゃなかったみたいですね、岡田さん?」
その噂に関しては俺も耳にしたことがある。
尤も、岡田自身はそんな噂も、どこ吹く風と言った様子だが…
その証拠に、
「小栗さん、あんたの話は良く分かった。この書類が偽造された物だ、ってこともな? ただ、どうにも解せんのは、“誰が”そして“何のために”こんなことをしたのか、ってことだ」
続く答えを求めるように、テーブルの上の用紙を指でトントンと叩いた。
「そうですね…。それは俺にも分かりません。ただ一つ言えるのは、裏で大きな力…つまり権力が動いている、ってことですかね」
その一言に、俺の胸が激しく脈打ち始める。
大きな権力…
それは恐らくあの人のことだ。
あの人なら、こんなこときっと蟻一匹殺すのと同じくらい、雑作もなくやって退けるだろうから…
「でも、こっちが偽造された物だ、って証拠は今のところないんですよね?」
それまでずっと無言を貫いていた深山さんが口を開いた。
確かに、裁判所に提出された、と言うだけで、どちらが偽造されたかなんて、現状では判断することは出来ない。
もしかしたら、本当に記載ミスだったのしれないのだから…