第31章 Friction
あっ、と二人同時に声を上げる。
「お気づき…ですね?」
小栗さんがしたり顔で俺達の顔を交互に見る。
「いや、でもちょっと待ってくれ…。確かに血液鑑定書に関しては、証拠として提出されていたが…」
どうにも理解出来ないといった様子で、異議を唱えたのは岡田だ。
納得行かないのは俺も同じ…、
何故二通あるのか、ということだ。
しかも一部分を除いては、全く同じ物が…
「お二人は“Se式血液型“ってのを耳にしたことはありますか? これはその検査結果を記した物なんです」
俺は今一小栗さんの言っている意味が理解出来なくて、隣で眉間に皺を寄せる岡田を見やった。
すると岡田は俄に信じられないと言った風に首を傾げた。
「Se式血液型については、俺も耳にしたことはあるが…」
「そうですか、それなら話は早い…、と言いたいところですが、どうやら櫻井さんはご存知ないようなので、簡単に説明しますね」
そう言って小栗さんはコーヒーを一口啜ると、二枚の用紙の相違点をペンで指し示した。
「“Se式血液型“と言うのは、簡単に説明すると、人間の体内から分泌される体液…つまり今回の事件だと“精液”と言うことになりますが、その体液の中に、A,B,Oの各型の物質が含まれているか、そうでないかを調べる検査なんですよ」
小栗さんの説明を、俺達は固唾を呑んで聞き入った。