第31章 Friction
小栗さんが徐に胸ポケットから二枚の用紙を取り出すと、それを開いて俺達の前に差し出した。
「これは、本来であればあなた方にお見せすることは出来ないんですが…、何せ深山の頼みですからね」
小栗さんが隣に座る深山さんを見て、ニヤリと笑う。
“知り合い“と聞いていたが、この二人も俺と岡田のように、お互いを信頼し合っているのが、その様子からも分かる。
「これ…は…?」
一見するとDNA鑑定書の写しのようにも見えるが…
でも何故二枚も…?
それもよくよく見れば、どちらの用紙にも智君の名前が表記されている。
「これは、被害者…つまり“伊藤結”の体内から採取された、大野智の物と思われる体液を、ABO方式で調べた結果です。因みに、この体液を調べた結果、犯人の血液型はA型だということが判明しています。因みに、大野智の血液型は?」
「A型…だけど…」
内心訝しみながら答える俺に、小栗さんが妙に納得したような顔で頷いて見せる。
「そうです。大野智の血液型は、A型。と、言うことは、この血液型鑑定書には、何ら問題はないと言うことになりますよね? では、何故同じ物が二枚あるのか…。それはここを見て下さい」
小栗さんの指が、二枚の紙の上を行き来する。
そして俺達は気付いた。
二枚の用紙の中の、明らかな相違点を…