第31章 Friction
朝、俺が目を醒ますと、岡田の姿はそこにはなく、岡田が寝ていた布団は、綺麗に畳んで部屋の片隅に積んであった。
俺は俄に痛む頭を一振りすると、布団から抜け出し、岡田に借りたスウェットの上からジャンパーを羽織った。
その時部屋の襖が開いて、エプロンを首からかけた岡田が、ひょっこり顔を出した。
「おっ、やっと起きたか…。朝飯、出来てるけど、食うだろ?」
「ああ、うん…。ってか、エプロン似合わねぇのな?」
俺は思わず吹き出しそうになった口元を、咄嗟に手で覆った。
お預け食らうのはゴメンだからな…
「そんなことより、お前二日酔いは大丈夫か? 随分飲んでたが…」
「ん…、ちょっとだけ…な…。でも大丈夫」
「そうか、ならいいんだが…。今日の午後、深山の知り合いの検事と会う予定になってるんだが…、お前どうする?」
検事…?
ああ、そう言えば知り合いがいるって…
「その人は、智君の事件とは…?」
「ああ、少なからず関わってはいる。ただ、どこまで話を聞けるかは、分からんがな…」
だろうな…
言ってみれば、弁護士と検察は相反する立場でもあるんだから…
その垣根を飛び越えてまで、ってのはそれなりに勇気のいることだとは思う。
でも…
「分かった、俺も会うよ」
検察側がどんな情報を掴んでいるのか…それが少しでも知れるのであれば…