• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第31章 Friction


酒のせい…

そう自分に言い聞かせながら、俺は岡田の肩口に頭を凭せ掛けた。

「櫻井…?」

岡田の声に、僅かな戸惑いが見え隠れする。

「おい、分かってんのか? 俺お前のこと…」

「知ってるよ…」

岡田が俺を諦め切れずにいることを…
俺の智君に対する気持ちが分かっているからこそ、身を引いた…ってことも…

それを知っていながら、俺は岡田の気持ちを利用しているんだ。

「勘違いするけど…いいのか?」

「いいよ、しろよ勘違い…」

最低だな、俺…

「後悔しないか?」

「…しないよ…」

後悔するくらいなら、あの時とっくにしてるさ…

傷付いた岡田を、同情とは言えこの身体に受け入れたあの時に…

岡田の腕が俺の肩を強く抱き寄せ、片方の手が俺の顎に添えられる。

俺は瞼を閉じ、されるがままに顔を上向かせた。

視界が徐々に暗くなって、俺の鼻先に岡田の鼻先が触れ、そこでピタリと止まる。

そして、

「無理してんじゃないよ…」

岡田の唇が俺の唇に触れることはなく、代わりに俺の額に小さな痛みが走った。

「俺は…別に無理なんて…」

「してんだろうが…。そんな今にも泣きそうな顔して…」

泣き…そう…?

俺が?

「何があったかは聞かないし、聞くつもりもない。でもな、櫻井?」

岡田の腕が俺を引き寄せ、その厚い胸の中に収めた。

「確かに俺はお前に惚れてる。でもな、俺はやっぱり大野を裏切ることは出来んのだよ…」

すまんな、と俺の耳元で言うと、俺の身体を解放して、テーブルに残された缶ビールを煽った。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp