第30章 Suspicion
どうしてだろう…
実の親と話をしているだけなのに、こんなにも気が重いなんて…
「ああ、そう言えば…。そのお前が請負ってる案件だが、あの男が関わった事件だそうじゃないか」
「どうしてそれ…を…?」
確かに関わってはいるが、担当弁護士はあくまで岡田だ。
証言台に立つことも考慮して、俺の名前は担当から外してある筈なのに…
「どうやらお前は私を甘く見ているようだな? 以前にも言ったと思うが、私はこれでも顔が広くてね。情報は色んな場所から入って来るんだよ」
そうだった…
確かに俺は父さんを侮っていたのかもしれない。
担当弁護士にさえならなければ、俺がまだ智君と関わっていることは知られることはない、そう思っていたんだから…
でも俺は…
「父さんの言う通り、俺は彼の…大野智の件に少なからず関わっています。でも辞めるつもりはありませんから…。俺は…」
約束したから…、必ず俺が智君の冤罪を晴らすと…
「まあいい。好きにすればいいさ。だがな、良く覚えておけ。お前の考えるように、そう簡単にはことは進まないということをな」
今更言われなくたって、そんなことは痛い程分かってる。
でも決めたから…戦うって…
「後悔することにならなければいいがな」
その一言を残して、電話が一方的に切られた。
俺は何も聞こえなくなった電話を耳に宛てたまま、背中に冷たい物が流れるのを感じていた。
それくらい、父さんを怖いと思ったのは、初めての事だった。