第30章 Suspicion
そろそろ寝るか…
PCの電源を落としたその時、キーボードの横に伏せて置いたスマホが震えた。
誰だろう、こんな時間に…
もしかして岡田とか…?
首を傾げながらスマホを手に取ると、液晶に表示された名前を見た。
えっ…、なんで…?
そこに表示されていたのは、父さんの名前で…
俺は一瞬出るのを躊躇った。
でも切れてはまたかかってくる電話の振動に耐えきれず、俺は電話を耳に当てた。
「もし…もし…」
自然と声が震える。
親子なのに…、こんなに緊張するなんて、自分でも思う。
けど、それだって今に始まったことじゃない。
昔から、俺は父さんの前では、酷く緊張していたから…
「こんな時間にどうしたんですか?」
「いや、大したことはないんだが、そろそろ戻るつもりはないのか?」
何を言い出すのかと思ったら、またその話か…
もいいい加減聞き飽きたよ。
「今みたいに、つまらん国選弁護ばかり受けてないで、お前さえその気になれば、私が口をきいてやってもいいんだぞ?」
一体どこに戻れと言うんだ、この俺に…
それに今は、智君の事件のことで頭がいっぱいで、余分なことを考えてる余裕なんてないのに。
「今は…無理です。丁度俺の請負ってる事件で手一杯なので…」
いずれは考えなくちゃいけないことなのかもしれない、父さんの跡を継ごうと思ったら…
でもそれは今じゃない。