第30章 Suspicion
とは言え、アルコールの力を持ってしても、そう簡単に眠れるわけもなく…
俺は帰宅と同時に、PCの電源を入れた。
喜多川建設と密な関係を築いていると思われる弁護士が誰なのか、気になって仕方なかった。
第一、小規模の企業ならともかく、喜多川建設程の企業が、どこの事務所とも顧問契約を交わしていないなんてこと考え難い。
その場合、俺達みたいな刑事事件ばかりを中心に扱う事務所り、民事に長けた事務所を選ぶ筈だ。
そう、例えば斑目法律事務所のような…
若しくは個人か…
でもだとしたら、その世界で相当名のある弁護士でないと、事件の揉み消しなんてこと、出来っこない。
侑李の起こした事件は、言ってみればマスコミにとっては格好のネタだ。
面白おかしく書き立てられたっておかしくはなかった筈。
それを揉み消すくらいなんだから…
どちらにしても、喜多川建設と深い関わりのある弁護士を調べる必要はあるだろうな。
森田の生い立ちも気にはなるけど…
森田については、喜多川建設の従業員だった…ということ以外、有力な情報は得られていない。
出来れば俺も一度会ってみたいんだけど…
俺と智君の関係が知られているかもしれない、といった懸念がある以上、無闇に動くことは出来ない。
結局、小さな一歩は、新たな疑問を産んだだけなのか…
もどかしくも焦れったい時間だけが、足早に過ぎて行った。