第30章 Suspicion
深山さんの従兄弟の店を後にした俺達は、酔いを冷ます意味もあって、大通りに出るまで歩くことにした。
資料の全てをタブレットに移しといて正解だった、なんてこんな時こそ思う。
「なあ、お前どう思う?」
結構な量を飲んだにも関わらず、顔色一つ変わっていない岡田が、ポツリ言う。
「どう、って…森田と喜多川建設の関係のこと?」
「それしかないだろ?」
確かにな…
「岡田は逆にどう思ってる?」
自分の立てた“仮説”に自信が無いわけじゃない。
森田は喜多川建設の手駒として使われたことは、恐らく間違いない。
それに、例の“悪徳弁護士”が手を貸していることも。
でも俺の立てた仮説だと、同時に幾つかの疑問点が浮かび上がるのも事実で…
「うーん、そうだなぁ…。まずは、その“悪徳弁護士”が誰なのか…を調べる必要があるな」
「だよな…」
同じ“弁護士”として決して許すことは出来ないから…。
「ま、今日の所はゆっくり休んで、明日に備えようぜ?」
久しぶりの酒に、上機嫌の岡田が俺の肩を思い切り叩く。
ったく、相変わらず馬鹿力なんだよ…
でも、岡田の言うことにも一理あるか…
「そうだな。俺も今日はもう休むよ」
丁度目の前に停まったタクシーに乗り込み、俺は岡田に右手を上げた。
「おう、そうしろ。じゃあな」
そう言って岡田は、すぐ後ろに付いたタクシーに乗り込んだ。