第30章 Suspicion
「ご馳走様でした」
一通り料理を食べ終え、深山さんがまた手を合わせた。
そして俺達の方へと身体の向きを変えると、咳払いを一つしてから、
「さっきの続きなんだけど…」
そう言って人差し指をピンと立てた。
「森田は、仮に虚偽の供述をしても、罪に問われないと思ってるんじゃないかってね」
「それは…どういう意味…?」
俺は深山さんの言った言葉の意味が分からず、一人首を傾げた。
虚偽の供述をすれば、それだけで罪が重くなることだって、往々にしてあることなのに…
「例えば、ですよ? 例の“悪徳弁護士”が絡んでいたとしたら? …どうです?」
“悪徳弁護士”と言われて、俺は漸く深山さんの言葉の意味を理解した。
あの、刑期の短縮を条件に、松本に智君を酷い目に合わせるよう持ち掛けた、あの弁護士と森田の間に接点があるとしたら…
虚偽の供述をしたことによって罪に問われたとしても、刑を軽減させることだって可能かもしれない。
「いや、“森田”と言うよりは、寧ろ“喜多川建設”なんじゃないか? 現に森田は出所後も、喜多川建設に出入りしてるんだから…」
だとしたら…
「森田は、喜多川建設に利用された…ってことなのか?」
智君を陥れるために利用されただけの、都合の良い“手駒”…そう考えるのが最も妥当だ。