第30章 Suspicion
それから凡そ一週間…
事務所に、一通の封書が届いた。
指紋鑑定を依頼していた、民間の鑑定業者からの物だった。
「早く開けろよ」
隣で急かす俺を一睨みして、岡田が封筒に鋏を入れる。
自然と早くなる鼓動が煩い。
「開けるぞ?」
中から取り出した、結果の書かれた用紙を手に、岡田が深く息を吸い込む。
そして、ゆっくりと開いた用紙には…
鑑定の元となる智君の指紋の拡大画像と、漫画雑誌に付着していたと思われる、幾つかの指紋画像がプリントされていて…
「何て書いてある?」
鑑定結果の詳細に目を通す岡田の肩を、焦れた俺の手が掴んだ。
「結果は? なあ、岡田…」
「一致…したらしい…」
「本当か? 本当に智君の指紋が?」
「ああ、どうやら本当らしい…。だが…」
「分かってる。でも…今だけは、素直に喜んでもいいよな?」
防犯カメラの映像が残されていない以上、それが決定的な証拠になるわけではない。
事件当日に、智君が管理人の奥さんから受け取った…なんて確かな証拠はどこにもないんだから…
それでもいい。
小さな進展だけど…
それだって、智君にまた一歩近付いたんだ…
そう思えば、自然と心だって踊る。
「やったな、櫻井」
俺は差し出された岡田の手を取り、強く握った。