第30章 Suspicion
事務所に戻ってきた岡田と深山さんに、伊藤結のアパートで聞き込んだ情報を伝える。
すると岡田と深山さんは顔を見合わせ、眉間に皺を寄せると、揃って首を傾げた。
「実はな、森田に彼女の写真を見せたんだが、“知らない”の一点張りでな…。現場と周辺での目撃情報もあることを伝えはしたんだが…」
俺は彼女のアパート住人から得た情報を、すぐ様岡田のスマホに送った。
岡田はその情報を元に、森田への聴取を行っている筈だ。
「じゃあ、森田は虚偽の供述を…?」
「そう考えるのが妥当だろうな」
そんな…
虚偽の供述をすれば、自分が不利になるというのに何故わざわざそんな真似を…
「何かありそうですね」
それまで沈黙を守っていた深山さんが口を開く。
その一言は、その場にいた俺と、そして岡田も思っていたことで…
でもその“何か”が分からず、頭を抱えるばかりで…
「クソっ…、アイツの供述さえ得られればと思ったんだが…」
珍しく岡田が声を荒らげ、資料を広げたデスクに拳を叩きつけた。
「その“何か”さえ見つかれば、解決への道が一気に広がるんですけどね」
苛立つ岡田を宥めるでもなく、床に落ちた資料を広い集め、デスクの上に積み上げた。
「あ、そう言えば指紋の件、どうなりました?」
「それなら、民間の鑑定業者に提出済だから、約1週間程度で結果が出るそうだよ」
「そうか…。取り敢えずは、ソレに賭けるしかないか…」
岡田の苦渋に満ちた一言に、俺達はただ頷くだけだった。