第30章 Suspicion
事務所に戻った俺達は、接見内容を所長に報告すると同時に、マンション管理人への聴取の連絡、検察側への証拠開示請求…、そして智君が事件当日、彼女の部屋から俺のマンションへ来る際に通ったと思われるルート上の、各防犯カメラの精査をすることにした。
その中には俺のマンションエントランスに設置された防犯カメラも、当然含まれていた。
でも…
事件当時警察が押収した防犯カメラ映像には、アリバイになるような映像は無かった。
それどころか、そこに智君らしき人物など、誰一人として映ってはいなかった。
そりゃそうだ…
智君はあの日、本当には自分のアパートではなく、俺のマンションに来ていたんだから…
最初っから宛にしちゃいなかった。
頼みの綱でもあったマンションの防犯カメラは、事件からもう既に何ヶ月も経過しているせいもあって、当時の映像は一秒たりとも残されてはいなかった。
それは彼女の部屋から俺のマンションまでのルート上の防犯カメラも同じで、事件当時の映像は全て上書き済みか、消去済みと言うことだった。
それでも有難いことに、管理人の奥さんは、もしもの場合は証人として証言台に立つことを約束してくれた。
管理人さんもまた同様だ。
彼らは智君が俺のマンションを度々訪れていたことを知っているから…