第30章 Suspicion
五分なんてあっという間だった。
もっと智君とこうしていたい。
例えそこに会話がなくても…
触れることが出来なくても…
一緒にいられるだけで…それだけで、空っぽだった俺の心が満たされて行く。
でも時間は無情で…
つい数分前に智君が刑務官に付き添われて入って来たドアがノックされ、そのドアが開かれた。
「そろそろ時間なので…」
顔を出した刑務官がそう告げると、智君がフッと息を吐き出してから、パイプ椅子の背を頼りに、ゆっくりと腰を上げた。
何か言わなきゃ…
言いたい言葉は沢山あるのに、こんな時に限って何一つ出てこなくて…
それでも漸く絞り出したのは、
「ま、また近いうちに接見に来るから…」
そのたった一言で、それも酷く掠れていた。
それでも、
「待ってるから…」
そう答えた智君の顔に笑顔を見た瞬間、それまで張り詰めてい緊張感が、一気に解れて行くような気がした。
荷物を纏め、面談室を出ると、先に出ていた岡田がベンチソファーから立ち上がり、
「話、出来たか?」
そう言って俺の肩を叩いた。
俺はそれに小さく首を横に振って応えた。
「そっか。ま、でも…、これから再審に向けて頻繫に顔合わせることになるだろうからな…」
「そうだな」
どれだけの時間がかかってもいい。
智君をこの腕に抱く日まで、俺は…