• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第30章 Suspicion


「その雑誌は、今は…?」

いつになく目の奥に鋭い眼光を光らせた岡田が、俺の肩を揺さぶる。

「多分まだあると思うけど…」

俺の記憶が確かなら、智君に関わる物の全ては、捨てることなく、ダンボールに詰め込んでクローゼットの奥に仕舞ってある筈。

もしまだ雑誌が俺の元に残っているとしたら…

あのダンボールの中だ。

「これはあくまで“仮定”だが、もしもその雑誌から、大野自身と、その管理人の奥さんの指紋が採取出来れば、大野のアリバイが証明出来るかもしれん」

指紋…?
そんなこと考えたことも無かった。

「で、でも、それはそうだとして、事件からはもう随分と月日が経っているのに、指紋の採取なんて可能なのか?」

鑑識の話では、二、三ヶ月で消えてしまうと聞いたことがある。

もしそれが本当なら、もう指紋なんて残っていない可能性がある。

「ああ、確かにな。でもそれは、ガラスやプラスチックなんかの場合だ。紙に付着した指紋は、保存環境にもよるが、最低でも一年近くは残るらしい」

「じゃあ…その雑誌に指紋が残されてる可能性は…?」

「十分に有り得る」

ほんの僅かだ…

もしかしたら、脆くすぐに崩れてしまうような、淡い期待かもしれない。

でも…

それでも俺達は、その小さな希望に賭けよう…

言葉ではなく、絡めた視線でそう誓い合った。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp