第4章 Confusion
俺達が付き合い始めたのは、中学の頃だった。
もっとも遊びの範疇を超えない程度のものだったが…
興味本位で身体だって重ねた。
その時はまだお互いに、若さからくる一過性の熱に浮かされている…そんな感覚だったのかもしれない。
そんな関係に変化が訪れたのは、俺が高校を卒業した頃。
智君も無事に就職が決まり、俺も親の薦める大学へ進学しようとする頃だったと思う。
どちらが先に言い出した訳でもなく、気付いたらお互いに愛を囁きあっていた。
それからは時間さえあれば、お互いを求め合い、冷えた心を暖めるように何度も愛し合った。
俺と智君の間に、他人が入り込む余地なんて、微塵もなかった筈。
それなのに…
「なぁ、岡田?」
ジャケットから取り出した煙草を咥えた岡田が、ん?、と顔を上げた。
「俺さ…、智君のこと、実は何にも知らなかったんじゃねぇか、って思ってさ…」
そう、俺が知っているのは、あくまでも俺の腕に抱かれて、悲しそうに笑う智君…
それしか俺は知らない。
「全部嘘だったんじゃないかって…。俺を愛してるって言ってくれたのも、俺にだけ見せてくれる笑顔も、全部…」
堪えていた物が一滴、すっかり冷めてしまったコーヒーの中に零れ落ちた。