第4章 Confusion
口から紫煙を吐き出しながら、岡田がフッと笑った。
「確かにな? お前の言う通りかもしれないな」
短くなった煙草を灰皿に揉み消し、岡田がテーブルに身を乗り出した。
「櫻井、お前は大野のこと何にも分かっちゃいねぇようだな」
テーブルに肘をつき、組んだ手の上に顎を乗せた。
岡田の冷ややかな視線が俺に刺さる。
「アイツの目に”嘘”はなかったぜ? 少なくとも俺にはそう見えたがな?」
俺だって…
俺だってそう信じたいし、そう信じてる。
でも…
「まぁな、お前の気持ちも分からんでもないが、今は信じてやることだ」
愛してるんだろ?
そう問われて、岡田の目を真っすぐに見据え、俺は迷うことなく頷いて見せた。
そうだ、俺が信じてやらなかったら誰が智君を?
俺しかいないじゃないか!
「なら大丈夫、安心した。俺も全力で協力する」
テーブルの向こうから、岡田の手が俺に向かって伸びてきた。
俺はその手をギュッと握った。
俺が智君を守ってみせる…
この命に代えても…絶対に…
そう誓った筈なのに…
守るって決めた筈なのに…
残酷とも言える無慈悲な言葉に、俺の心は脆くも打ち砕かれた。
ごめん智君…
君を守れなかった俺を許して…
「Confusion」完