第30章 Suspicion
「単刀直入に聞くが、俺達をここに呼んだということは、君に再審請求の意思がある、と判断して構わないんだね?」
岡田の、いつになく落ち着いた、それでいて力強い声に促されるように、智君が小さく頷く。
「そうか…。では俺達も、君の関わった事件の解決のために、全力でサポートさせて貰うよ」
「ああ、頼む…」
短く答えた智君の顔に、ほんの少しだけ笑みが浮かぶ。
「よし、じゃあこちらからいくつか質問をさせて貰うが、構わないか?」
智君が頷くのを確認して、岡田が愛用のノートと、そして何日もかけて二人で仕上げた資料を挟んだファイルを開いた。
そして俺も…
タブレットを開き、検察側から取り寄せたこれまでの供述記録と尋問調書を画面に表示させた。
「先ず、君と被害者とされる女性”伊藤結”との関係について聞かせてくれるか?」
「結とは職場の先輩の紹介で知り合って、それから付き合うようになって…」
「それは世間一般で言う”恋人関係”にあった、ということでいいのかな?」
「ああ、そうだ…」
なんの躊躇いもなく智君が口にした肯定の言葉が、俺の胸に突き刺さる。
聞きたくなかった。
智くんの口から、彼女の名を聞きたくはなかった。
否定してくれたら、どんなに掬われたことか…